商業登記

「商業登記」とは?

会社や法人を設立する場合や、既存の会社や法人を変更する場合には、登記の申請が必要です。商業登記制度は、会社(法人)の基本的な事項を公示することにより、会社の信用保持と取引の安全を図ることを目的としています。

登記事項は法定されていて、登記事項に変更が生じる場合には、一定の期間内に登記を申請しなければなりません。また、登記をすることによって、初めて効力が生じる登記事項もあります。

不動産登記は申請する期間に制限はありませんが、商業登記は一定期間内に行わなければ、ペナルティー(過料)が科されることがありますので、注意が必要です。

会社を設立したい

平成18年に施行された会社法により、設立できる会社は
(1)株式会社 (2)合同会社 (3)合名会社 (4)合資会社 の4種類となりました。
株式会社以外の3つは持分会社と括られ、株式を発行し出資を募る株式会社とは異なります。ここでは株式会社についてご説明します。

株式会社設立の流れ

基本的事項の決定 類似商号の調査 事前準備 定款作成 資本金の払い込み 役員選任 登記申請、完了

基本的事項の決定

株式会社を設立するには、まず会社の基本的事項を決めなければなりません。商号、事業目的、本店所在地、役員などを決め、定款を作成します。

商号

「商号」とは社名のことです。株式会社の商号を決める際には、以下のルールに従わなければなりません。

  1. 「株式会社」の文字を含むこと
  2. 日本文字、ローマ字、アラビア数字、その他法務大臣の指定する符号は使用可
  3. 「&」(アンパサンド)、「‘」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点)の6種の符号は使用可
  4. ローマ字を用いた複数の単語の間をスペースで区切ることも可
  5. 支店などや一営業部門であることを示す文字の使用禁止(「支店」「支社」「総務部」など)
  6. 法令により使用を禁止されている文字の使用禁止(「銀行」「信託」「証券」「保険」など)
  7. 同一所在場所における同一商号の使用禁止(詳細は2に記載)

目的

会社が行う事業の目的を決めます。許認可の必要な事業を行う場合は、許認可を受ける官庁に事業目的の記載方法を確認しておく必要があります。記載すべき事業目的が登記されていないと許認可が得られない場合があるので、注意しましょう。

本店所在地

会社の本店をどこに置くか決めます。定款には「独立の最小行政区画」を記載すればよいのですが、住居表示上の地番まで特定して記載することもできます。
ただし、住居表示上の地番まで特定すると、同じ行政区画内で本店を移転する場合にも変更登記が必要になり、費用がかかります。

発起人

会社設立にあたり、定款作成や登記申請などの手続きを行う人を「発起人」といいます。会社設立には1人以上の発起人が必要です。発起人は会社設立時に発行する株式を、1株以上引き受けなければなりません。
つまり、出資をし、後に株主になるということです。株主として会社の経営に参加することになりますので、経営ビジョンに賛同してもらえるなど、パートナーとしてふさわしい人を選びましょう。
他の出資者の出資割合(持ち株割合)が大きいと、決議に反対されてしまい、自分の思うような経営ができなくなる可能性がありますので、自分が経営したいのであれば、50%以上は出資するようにしましょう。

設立時に発行する株式すべてを発起人が引き受ける方法で行う設立を「発起設立」、発起人以外の人にも株式を引き受けてもらう方法で行う設立を「募集設立」といい、どちらの方法で設立するか決めなければなりません。
募集設立は、多くの資金を集めることができますが、手続きが煩雑です。小さな会社はほとんどが発起設立です。

役員と会社機関

会社には取締役、代表取締役、監査役、会計参与、会計監査人などを置くことができます。取締役と代表取締役は必ず置かなければなりませんが、その他の役員を置くかは基本的には自由になっています。
また、会社の機関として取締役会、監査役会もあります。一定の場合、決まった役員、機関を置かなければならないこともありますので、詳しくはご相談下さい。

事業年度

事業年度は1年を超えない期間で定めます。事業年度の最終日を「決算日」といい、決算日から2ヶ月以内に税務申告を行います。事業年度を半年にすることもできますが、年に2回申告しなければならなくなりますので、手間がかかります。1年にするのが一般的です。

類似商号の調査

以前は同じ市町村内に事業目的が同じで、よく似た商号や同一の商号がすでに登記されている場合、その商号を使うことができませんでしたが、会社法施行後は事業目的が同じで同じ市町村内にあっても、本店所在地の住所が同じでなければ登記できることになりました。

ただし、近くに同じような商号の会社があれば、商号を真似され損害を受けたと使用差し止めを求められたり、損害賠償請求をされる可能性がありますので、注意が必要です。トラブルに巻き込まれないためにも、できるだけ商号の調査をし、近くに同じような商号の会社があれば、違う商号にする方がよいでしょう。

事前準備

商号が決まったら、会社の代表印を注文します。
発起人、役員となる人は印鑑証明書が必要ですので、各1通ずつ用意します。発起人兼役員の場合は2通必要です。

定款作成

定款には、目的、商号、本店所在地など、記載しなければならない事項が決まっています。必要な内容を盛り込んだうえ、公証人役場で認証を受けます。事前に公証人に連絡をし、FAXなどで定款や印鑑証明書を確認してもらっておくと、認証がスムーズにいきます。(公証人役場によって取り扱いが異なりますので、管轄の公証人役場に事前にお問い合わせ下さい)

定款認証には認証手数料(約5万円)、収入印紙代(4万円)、謄本交付代などが必要ですが、電子定款認証を行えば、収入印紙代は不要になります。

資本金の払い込み

定款認証後、各発起人は自分が出資する金額を、代表発起人指定の個人の普通預金口座に払い込みます。払い込んだ金額が記載された通帳の写しは、払込証明書として、設立登記申請の際に法務局に提出します。募集設立の場合は、通帳の写しではなく、金融機関が発行する払込金保管証明書が必要です。

役員選任

定款に取締役や監査役の氏名が記載されている場合は、その人に就任を承諾してもらい、記載されていない場合は、株式の払い込みが終わった段階で発起人が取締役や監査役の選任をします。取締役会を設置する会社は、代表取締役を選定しなければなりません。

取締役、監査役に選任された人は、株式の引き受けなどについて調査報告書を作成します。

登記申請

定款認証や資本金の払い込み、取締役の調査報告などが終わったら、法務局に登記の申請を行います。登記が受け付けられた日が会社の設立日になりますので、設立日にこだわるのであればその日に登記申請しなければなりません。

法務局に申請したら、約1週間ほどで登記が完了します。代表取締役の印鑑証明書や会社の登記事項証明書は、法務局で取得することができます。

登記が完了したら、税務や労務の手続き、許認可申請などを行います。この一連の手続きにより、会社を設立することができます。

株式会社の設立には、基本事項を決めたり、印鑑を注文したりする準備期間が必要になります。希望に添った会社にするためのご提案を希望される場合には、お早めにご相談されることをおすすめします。

また、定款の認証費用に加え、登記申請時の登録免許税(資本金の0.7%、15万円を下回るときは15万円)なども必要です。定款認証を電子定款によって行う場合は、収入印紙(4万円)が不要になります。当事務所では電子定款認証手続きを行っていますので、設立費用を軽減することができます。

役員、本店、目的などを変更したい

役員変更

役員を変更する場合、変更を決議した株主総会議事録(取締役会議事録)、選任された取締役らが就任を承諾した旨の書面などを添付して、2週間以内に法務局に変更登記の申請をすることになります。この議事録には取締役各人が実印を押印し、市区町村長作成の印鑑証明書を添付することになっていますが、一定の要件を満たすと印鑑証明書の添付省略が認められます。

取締役が辞任したり死亡した場合には、辞任届や死亡の記載のある戸籍謄本などを添付します。

役員変更の登記申請において、登録免許税は1万円(資本金の額が1億円を超える場合は3万円)です。

変更後2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に変更の登記を申請します。

本店移転

本店を移転したいという場合、定款に定められた行政区画内での移転か、そうでないかによって手続きが異なります。

  1. 定款に記載された本店所在地が最小の行政区画(例えば「熊本県熊本市」)で、移転先も同じ行政区画内である場合
    →取締役会決議(取締役の過半数の一致)が必要
    定款変更は行わなくてよいので、株主総会を開催する必要はありません
  2. 定款に記載された本店所在地が最小の行政区画で、移転先が別の行政区画である場合
    →株主総会及び取締役会(取締役の過半数の一致)が必要
    定款変更が必要になるため、株主総会の特別決議で可決される必要があります。株主総会で可決されたら、取締役会(取締役の過半数の一致)で住居表示の地番まで、本店所在地を決定することになります。
  3. 定款の本店所在地が住居表示の地番まで記載されている場合
    →株主総会及び取締役会(取締役の過半数の一致)が必要
    移転先が同じ行政区画内であっても、定款変更が必要になります。決議の流れについては、bと同じです
  4. 移転先が旧本店所在地と同じ法務局の管轄区域内である場合、その法務局にのみ変更の登記を申請すればよいのですが、他の法務局の管轄区域内に移転する場合は、旧本店所在地と新本店所在地を管轄する法務局の両方に登記を申請することになります。

    本店移転の登記申請において、登録免許税は新旧本店所在地を管轄する法務局それぞれに3万円(合計6万円)です。移転先が旧本店所在地と同じ法務局の管轄区域内である場合は、3万円のみになります。

目的変更

会社の目的(事業内容)は定款の絶対的記載事項なので、目的を変更する場合には定款変更が必要です。定款変更は株主総会の特別決議により行います。事業内容によっては、行政庁の許認可が必要なものもありますので、事前に確認をしておく必要があります。

目的の変更をした場合は、2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に変更登記を申請します。

商業登記に関するご相談は田島事務所までお気軽に。