離婚問題・夫婦関係

近年の「離婚問題」

近年、離婚件数は増加傾向にあり、ここ30年で年間の離婚件数は2倍以上となりました。離婚件数の増加は、離婚を選択しても生きていけるよう社会が豊かになったことや、思考が欧米化している影響が考えられます。

とはいえ、離婚の決断がそう簡単なものではないことは、昔も今も変わりません。離婚しようと決めたものの、気持ちが揺れてしまったり、お金のことや子供のこと・・・離婚するにあたって考えなければならない問題もあります。

一時の感情ではなく冷静に考えたうえで、やはり離婚を選択したいと思うなら、離婚後の生活設計をしっかりとしておかなければなりません。離婚後に後悔しないように、一度専門家にご相談されることをおすすめします。

よくある相談事例のご紹介

離婚したいが相手が応じてくれない

離婚には以下の4つの方法があります。

協議離婚
夫婦間の話し合いで離婚に合意し、離婚届に署名押印のうえ、役場に提出することで離婚を成立させるもの
調停離婚
夫婦間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所に離婚調停を申立て、調停委員を交えて話し合い、離婚を成立させるもの
審判離婚
調停で一方が離婚に合意しない場合、家庭裁判所の判断で職権により離婚を成立させるもの
裁判離婚
調停や審判で決着がつかない場合、一方が家庭裁判所に訴えを起こし、判決で離婚を成立させるもの

相手が話し合いに応じない場合、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。
調停では、2名の調停委員が夫婦の言い分を聞き、離婚についての合意点を見出します。調停が整った場合は、裁判所によって作成された調停調書と離婚届を、10日以内に市町村役場に提出しなければなりません。
調停が整わなかった場合は、家庭裁判所が職権で審判に移行することができます。

調停離婚は話し合いによる解決が基本であり、相手に対する強制力はありませんが、審判離婚は家庭裁判所の職権による強制力があります。
ただし、夫婦のことはできるだけ話し合いで解決した方が望ましいという観点から、調停の申立てをせずにいきなり審判の申立てをすることは認められていません。

審判でも決着がつかない場合には、一方が相手の住所地を管轄する家庭裁判所に訴えを起こすことができます。裁判離婚をする場合には、法律で定められた離婚原因があることが必要です。
調停を申し立てても、もう一度夫婦でやり直すことにしたような場合は、いつでも取り下げることができます。

離婚の流れ

離婚したい際に取り決めておくべきことを知りたい

お互いが離婚することに合意したうえで、市町村役場に離婚届を提出し、受理されれば離婚は成立します。未成年の子供がいる場合は、離婚届に親権者を記載しておかなければ受理されませんが、その他のことは定めておかなくても離婚届は受理されます。

しかし、離婚条件について十分話し合いをしていなかったり、決めたことを書面に残していなかったりすると、後々トラブルになることも考えられますので、協議離婚をする場合は諸条件につき十分話し合ったうえで、合意の内容を公正証書にしておくことをおすすめします。

離婚の際に考えるべきことは、以下のことがあります。

  • 姓と戸籍の問題 →Q2をご覧ください
  • 子供の問題 →Q3Q4をご覧ください
  • 養育費の問題 →Q5Q6をご覧ください
  • 財産分与の問題 →Q7をご覧ください
  • 慰謝料の問題 →Q8Q9をご覧ください

離婚問題 Q&A

相手には別に交際している人がいるようです。離婚すべきでしょうか?

相手の異性問題が解決すれば夫婦としてやっていきたいと思うのであれば、その気持ちを伝え、相手と冷静に話し合った方がよいでしょう。
とはいえ、二人きりだと感情的になってしまい、話が余計こじれてしまうことも考えられます。冷静に話し合うには、中立の立場で話を聞いてくれる親戚や友人に立ち会ってもらうのも一つの方法ですが、カウンセラーに相談したり、家庭裁判所に夫婦関係円満調整の調停を申し立てることもできます。

夫婦関係円満調整の調停とは、家庭裁判所で調停委員が双方の事情をそれぞれに聞いて、夫婦関係が円満でなくなった原因はどこにあるのか、その原因をどのように正すようにすれば夫婦関係が改善するのかなど、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をしたりするものです。
申立ては相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定める裁判所に対して行います。調停の場で相手と冷静に話をすることによって、夫婦が円満な関係に戻れれば、調停はいつでも取り下げることができますし、逆に離婚の意思が固まった場合には、円満調停を離婚調停に切り換えることもできます。

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離婚すると姓と戸籍はどうなりますか?子供を同じ姓、戸籍にすることはできますか?

法律上でいう離婚の成立とは、戸籍上夫と妻が別々の籍になることをいいます。婚姻の際に夫婦のどちらかを筆頭者とする新たな戸籍を作りますが、その時筆頭者とならなかった方は籍を抜き、もとの戸籍に戻るか新たな戸籍を作ることになります。
籍を抜いた側の離婚後の姓は旧姓に戻るのが原則ですが、離婚の日から3ヶ月以内に市町村役場に届け出れば、婚姻時の姓を継続して使用することもできます。離婚の日から3ヶ月以上たつと、婚姻時の姓を名乗るためには家庭裁判所への申立てが必要になります。
また、離婚後やむを得ない事情があるときは、離婚時に選択した姓を変更することもできます。

夫婦に子供がいる場合、両親が離婚したとしても子供の姓と戸籍は変わりません。筆頭者であった方が子供を引き取って育てる場合、ともに暮らす親子は同じ姓になりますが、筆頭者でない方が子供を育てる場合は、親子で姓が異なってしまうことになります。
夫が筆頭者で妻が新たに戸籍を作る場合、子供を妻と同じ姓で同じ戸籍にするためには、家庭裁判所で手続きをする必要があります。
外形上、ともに暮らす親子の姓を同じにすればよいということであれば、妻が市町村役場で婚姻時の姓を名乗る手続きをすればよいのですが、この方法だと子供は夫の戸籍に残ったままになります。

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子供の親権について相手と揉めています。どうしたらいいですか?

親権というのは、①子の身上監護権およびその義務 ②子の財産管理権およびその義務 に加えて③身分上の法定代理人の立場 が含まれます。
夫婦が婚姻している状態であれば、子供の親権は二人にあるのですが、夫婦が離婚する場合はどちらかを子供の親権者と定めなければ、離婚届は受理されません。どちらが親権者になるか揉めている場合、調停や審判、裁判による離婚手続きの中で親権者も決めることができます。

その際、親権者を決める判断基準になるのは、年齢をはじめとした子供の事情や夫婦双方の事情です。養育能力や経済状態の他、子供の世話を手伝ってくれる人がいるかどうかなど、子供の利益を最優先に考えられた結果、どちらを親権者にするか総合的に判断されることになります。

通常は子供を引き取って育てる方が親権者になりますが、子供とともに生活し、身の回りの世話をする監護権を分担することもできますので、相手と親権について揉めている場合は、相手に親権を譲り、自分は監護者となることで子供と生活をともにすることができます。

のちに親権者や監護者を変更することもできますが、変更することにつき正当な事由が必要で、家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

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子供は相手が引き取ることになったのですが、定期的に会うことは可能ですか?

可能です。離婚によって離れて暮らすことになった子供に、別居親が会ったり一緒に時間を過ごしたりする権利は「面接交渉権」として認められています。
これは親子のコミュニケーションが子供のために必要だという観点から認められた権利ですので、親が子供に暴力を振るったり、子供が会いたがらないような場合には、面接交渉することは認められません。

子供と一緒に暮らす親が、相手に会わせたがらないようなこともありますが、そのような場合は面接交渉権を持つ親が家庭裁判所に申立て、子供に会わせてもらえるよう勧告を出してもらうこともできます。

面接交渉は子供のために認められた権利ですので、親は自分の心情を優先するのではなく、子供のことを第一に考えるようにしなければなりません。

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子供は私が引き取ることになったのですが、相手が養育費を支払ってくれるか不安です。将来的にもきちんと支払ってもらえるようにする手続きはありますか?

はい、あります。

親である以上は、親権の有無や実際に子供を養育しているかどうかに関わらず、子供を育てる責任があり、養育費を分担する義務があります。
養育費とは、子供が社会人として自立するまでに必要となる全ての費用で、支払い期間の目安はだいたい20歳までですが、当事者の協議によって、18歳(高校卒業)までや22歳(大学卒業)までにすることも可能です。

相手に養育費を確実に支払ってもらうためには、離婚する前に養育費の支払いについて具体的に取り決めをしておくことが重要です。離婚の合意はできているけれども養育費の条件などについて二人の合意ができないという場合も、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。

養育費について相手と取り決めをした際、内容を公正証書(強制執行認諾文言付き)にしておけば、相手からの支払いが滞った時に差押えをすることができます。

養育費の合意について、公正証書を残していないのであれば、家庭裁判所における調停、審判、裁判などを経て、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうことになります。公正証書と同様に、調停調書や審判書、判決によって、相手の財産を差し押さえることもできます。

離婚の際に調停などを利用し、予め養育費についての取り決めをしていた場合は、再度調停などをする必要はありません。差し押さえることができる財産は、給与や退職金、預金口座などで、給与・退職金は手取り額の2分の1まで(給与が33万円を超える部分は全額差し押さえ可能)、将来分についても差し押さえることができます。相手がサラリーマンの場合、差し押さえの効果は大いに期待できるでしょう。

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離婚した元妻が再婚したという話を聞きました。経済的に余裕もあるようですし、養育費の支払いはやめてもいいですか?

相手が再婚しても、原則的には養育費の支払いをやめることはできません。ただし、再婚相手と子供が養子縁組した場合などは、養育費の減額が認められることもあります。相手の再婚以外にも、経済的な事情の変化により養育費の増額や減額が認められます。
養育費の増額が認められるケースとしては、子供の進学による学費の増加や、養育している親の失業や転職による収入の減少などがあります。
逆に、養育費の減少が認められるケースとしては、養育費を負担している親の失業や転職による収入の減少、病気による医療費の負担増などがあります。

話し合いで相手と合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。

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婚姻中に、夫名義でしてきた預貯金や夫名義で建てた家は、離婚すると全て夫のものになるのですか?

婚姻中、夫婦が協力して得た財産は共有財産とみなされますので、全てが夫のものになるわけではありません。

例えば、婚姻中、生活費を管理したり将来に備えた預貯金のために、どちらかの名義で口座を作ることはよくあることです。
ただ、離婚する場合に、それぞれ個人名義のものが各自の取り分だとすると、不公平が生じることがあります。結婚生活で夫婦が協力して得た財産は、公平に分配されなければなりません。
このように離婚時に財産を分けることについては、「財産分与」という言葉が使われます。通常、財産分与というと、結婚生活で夫婦が協力して得た財産の清算的意味合いが中心ですが、財産分与に慰謝料を含めた慰謝料的財産分与や離婚後に生活が困難になる側への生活費支援の目的で行われる扶養的財産分与もあります。

では、分与の割合はどのようにして決まるのでしょうか。
判例においては、分与割合は財産形成に対する夫・妻それぞれの貢献度によって決まるという考え方がとられています。しかし、財産形成に対する貢献度といっても、夫婦の一方が働いて収入を得、もう一方が家事を受け持っている場合など、収入割合のみをもって貢献度とすると著しく不公平が生じることがあります。
そのため判例では、収入額のみではなく家事労働も財産形成に対する貢献と評価し、夫婦の分与割合は原則2分の1と認める傾向にあります。

財産分与の対象は、現金や預貯金、不動産、車や家具などの動産と様々です。また、車や住宅のローンなど負の財産も分与の対象になりますので、注意しなければなりません。

分与に際し、預貯金や現金は分与割合に応じてそのまま分けることができますが、分けづらいものもあります。居住していた不動産など、売却して換価する場合には、売却代金を分ければよいのですが、換価せずにどちらかが住み続ける場合は、譲渡の手続きが必要になることもあります。住宅ローンが残っている場合、今後の支払いについても検討しなければなりません。

一方、結婚前に各自が貯めていたお金、結婚後にどちらかが相続などで手に入れた不動産などは特有財産とされ、分与の対象にはなりません。

財産分与は離婚後でも請求可能ですが、慰謝料的財産分与は3年、それ以外は2年を過ぎると請求できなくなりますので、注意が必要です。

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離婚することになりました。相手に慰謝料を請求することができるのは、どのような場合ですか?

離婚の慰謝料というのは、不倫などの違法行為によって、離婚原因を作った相手から受けた精神的苦痛に対する損害賠償の性質があります。ゆえに、単なる性格の不一致で離婚することになっても、相手に慰謝料を請求することはできません。

慰謝料が認められる代表的はケースとしては、不貞行為を行った場合、配偶者に対する暴力行為(DV)を行った場合などがあげられます。慰謝料を請求する場合には証拠も必要になりますので、写真や診断書などは残しておくようにしましょう。

慰謝料の請求ができるのは離婚後3年までですが、離婚時に慰謝料を放棄してしまったような場合には、請求できなくなります。離婚する際に、揉めたくないばかりに、養育費や慰謝料を放棄してしまったという話をよく耳にしますが、お金のことは離婚後の生活においても非常に重要なことですので、安易に放棄したりしないようにしましょう。

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慰謝料の金額はどれくらい請求できますか?

慰謝料の算定については明確な基準はありませんが、その夫婦の経済状態、年齢、職業、婚姻年数、破綻に至る原因の内容などを総合的に考慮して決められます。話し合いによる解決の場合、100万円から400万円程度を支払うケースが多いようですが、100万円以下という場合も珍しくありません。慰謝料的要素も含めて財産分与を行う場合もあります。

慰謝料の金額について、話し合いで合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。調停でも合意が得られない場合、裁判を起こすこともできますが、長期間かかったあげく、判決では数十万円の支払いしか認められなかったということもありますので、双方の実情を考慮して、現実的な金額での和解を考えた方が望ましいでしょう。

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